意訳・ソフトボール大会
喜多 武司

 一瞬無機質の空間がひろがり目の前が真っ白になる。何の音も聞こえない。見るとグローブに白球が入っている。次の瞬間、天空を突き抜けんばかりの大拍手が聞こえてきた。

 試合前、怪我のないよう危険なプレイはしないと年配プレイヤー同士で申し合わせていた。なまった体を引きずる50過ぎての無理筋プレイは怪我に直結するからだ。

 子どものころから野球に親しんできた。土手川原での草野球。昭和30年代のガキらしく、青っ洟をずるずるさせ、ホコリと汗で薄汚れた白のランニングシャツに半ズボンそれに野球帽を横にかぶってのいでたちで、夕日が沈みボールが見えなくなるまで所狭しと夢中でグランドを走り回っていた。

 ライナー性の当たりがきたときに、子どものころと同じように無意識に横っ飛びをしていたのだ。ちくちくと痛いなとおもったら、右ひじから血がにじみ滴り落ちる。申し合わせもなんのその、気持ちだけが子どものころに戻っていた。

 異国の地・マドリッドで毎年童心に帰れる機会を提供してくれるソフトボール大会。今年はどんな「迷場面」が見られるのだろうか・・

喜多 武司